今年はホワイトダイヤルの年なのだろうか? そう思っても過言ではないほど、氷のようなカラーリングをまとった目を見張るようなモデルが数多く登場している。ノモス グラスヒュッテも今回その流れに加わり、アホイ ネオマティック38デイトにメタリックホワイトのダイヤルを採用してきた。これまで同モデルは多彩なカラー展開で発表されてきたが、このホワイトダイヤルはドイツブランドらしい独自のスタイリングに控えめな差し色を添えた、実にクラシックな1本である。
ひと目見れば、このアホイがダイバーズウォッチらしくないことは明らかである。そのモデル名や200mの防水性能が水中の使用を想定していることを表していても、ここではそうは呼ぶことはない。おなじみの長く細いラグとほぼベゼルレスのケースはクラシックなタンジェントを思わせるが、少しだけ大胆なプロポーションとリューズガードを備えた設計から、このモデルがドレスウォッチ以上の用途に対応していることが読み取れる。ステンレススティール製のケースは直径38.5mm、厚さ9.9mmで、ねじ込み式リューズにより200mの防水性能を誇る。
Nomos Ahoi Slanted on tray
Nomos case side
Nomos logo on dial closeup
小ぶりな36mm径のアホイ ネオマティックには、今回のモデルに似たシルバーホワイトのダイヤルや非常に鮮烈な“シグナルホワイト”など、このほかにもホワイトダイヤルのバリエーションがすでにラインナップされている。しかしこの38.5mm径モデルに見られる差し色の組み合わせは、また少し異なる印象を与える。やわらかく光が広がるシルバーメッキのホワイトダイヤルには、6時位置上に配されたスモールセコンドを回る鮮やかな赤の秒針が映える。ブランドロゴ下の“neomatik”のロゴは控えめながらもメタリックゴールドで印字され、上品なアクセントを添えている。さらに時・分針には淡いブルーのスーパールミノバが塗布されており、視認性にも優れる。
3時位置のインデックスに代わって配された大きなデイト表示窓は、アホイ デイトならではの魅力的なディテールのひとつである。視認性は極めて高く、書体のサイズ感も余白をうまく活かしている。ノモス独自のクイックチェンジ式デイト機構には、前後どちらにも日付を送れるというユニークな特長があり、これによってカレンダー操作をより素早く行うことが可能となっている。
Movement shot
Dial Closeup of 10
Nomos Ahoi DUW 6101 Shot
時計を裏返すとシースルーバックから、自動巻きムーブメント DUW 6101を一望できる。この自社製ムーブメントはケースに対して非常にバランスよく収まっており、裏蓋から覗く大部分をムーブメントが占めている。パワーリザーブは42時間、振動数は2万1600振動/時で、ノモスが自社で設計・製造を行った脱進機、ノモススウィングシステムを搭載する。このムーブメントは2018年から使用されているものの、厚さ3.6mmという薄型設計と、価格帯を超える仕上げのクオリティによって、現在でもノモスの高いムーブメント製造能力を示す存在となっている。
装着感としては、このアホイ デイトはやや大きめに感じられ、実際の38.5mm径よりも40mm程度のサイズ感に近い印象を与える。ラグは短めではあるが手首に密着する形状ではなく、ケース全体が思った以上に手首から高くなる構造となっている。これに加えて、ダイヤル面積の広いプロポーションにより、実寸よりも視覚的に大きく見える設計である。もし、このサイズ感がやや大きく感じられるのであれば、ノモスが展開するデイトなしの36mm径モデルが、より優れた選択肢として存在していることを思い出して欲しい。
Nomos Ahoi 38 White Wristshot
このコレクションの初期モデルに見られるスカイとサンドのカラーは個人的にも好みだった。しかしホワイトダイヤルの登場により、ブランドのなかでも冒険的な位置づけにあるこのコレクションに、より伝統的、かつドイツ的なノモスらしいデザインが加わったことになる。価格は77万円(税込)。この新しいアホイは、市場にひしめく同価格帯のスイス製ダイバーズウォッチに対する魅力的な代替案となる。ダイバーズらしいベゼルよりバウハウスデザインを選び、水中でも優れたドイツ時計のスタイリングを楽しみたい人にとって、非常に説得力のある1本となるだろう。